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【私の実体験】バックパッカー旅が就職活動とキャリアにもたらした意外な影響

Tags: バックパッカー旅, 就職活動, キャリア, 人生観, 実体験

卒業後の進路とバックパッカー旅:漠然とした不安の中で決断したこと

大学生活の終盤が近づくにつれて、多くの人が将来について考え始めます。それは、私自身も例外ではありませんでした。友人たちが次々と就職活動に邁進していく中で、私の中には「本当にこの道で良いのだろうか」という漠然とした不安がありました。社会に出る前に、何か大きな経験をしてみたい。自分自身をもっと深く知りたい。そんな思いから、以前から漠然と憧れていたバックパッカーとして、世界を旅することを決めました。

しかし、同時に「旅が就職活動のブランクになるのではないか」「社会人として働く上で、旅の経験なんて役に立たないのではないか」という不安も頭をよぎりました。周りの友人は着実にスキルを身につけ、将来のキャリアパスを描いているように見えました。そんな中で、旅に出るという選択は、少し立ち止まること、あるいは寄り道のように感じられたのです。

しかし、あの時の私は知る由もありませんでした。このバックパッカー旅こそが、その後の私の就職活動、そしてキャリア全体に、予想もしないほど大きな、そしてポジティブな影響を与えることになる、ということを。

旅で直面したリアルな課題と、そこから生まれた「実社会で役立つ」スキル

旅は、華やかなイメージとは裏腹に、日々予期せぬ出来事の連続です。初めての土地で言葉が通じなかったり、交通機関が突然運休したり、予約していた宿が見つからなかったり、お腹を壊したり、といった小さなトラブルは日常茶飯事でした。

例えば、東南アジアを旅していた時のことです。長距離バスの予約がシステムエラーで入っておらず、次のバスまで丸一日待たなければならなくなりました。言葉も十分に理解できない土地で、突然の変更にどう対応するか。最初は戸惑い、焦りましたが、冷静に状況を把握し、他の交通手段を探したり、バス会社と交渉したりするうちに、自然と問題解決のための思考力が磨かれていきました。最終的には、少し遠回りにはなりましたが、無事に次の目的地にたどり着くことができました。

また、限られた予算の中で旅を続けるためには、お金の管理が非常に重要です。食費、宿泊費、交通費、アクティビティ費など、日々出入りするお金を把握し、何に優先順位をつけるかを常に考える必要がありました。時には現地の市場で自炊したり、無料のイベントを探したりするなど、創意工夫を凝らすことも求められました。こうした経験は、帰国後の家計管理はもちろん、仕事におけるコスト意識や計画性の基礎になったと感じています。

さらに、旅先では本当に多様な人々に出会います。年齢、国籍、文化、価値観が全く異なる人々との交流は、時に刺激的であり、時に難しさも伴います。異文化の中で相手を理解しようと努め、自分の考えを伝えようと努力する中で、コミュニケーション能力や相手への配慮が自然と身についていきました。特に、言葉が完全に通じない状況で、非言語コミュニケーションや、簡単な単語を組み合わせながら意図を伝える経験は、相手を理解しようとする根源的な姿勢を養ってくれました。

これらの経験を通じて、私は旅のガイドブックには載っていない、生きたスキルを習得していったのです。それは、単に知識として得るものではなく、実際に困難な状況に身を置き、それを乗り越える過程で培われた、まさに実社会で求められる力でした。

就職活動で旅の経験が「武器」になった瞬間

帰国後、私は就職活動を開始しました。当初の不安は杞憂に終わりました。バックパッカー旅の経験は、面接で自己PRをする上で、非常に強力な「武器」となったのです。

面接官は、私が長期のバックパッカー旅をしていたことに強い関心を示すことが多くありました。「なぜ旅に出ようと思ったのですか?」「旅の中で最も大変だったことは何ですか?」「それをどう乗り越えましたか?」「旅で学んだことは何ですか?」といった質問を頻繁に受けました。

私は、旅で経験した具体的なエピソードを交えながら、問題解決能力、適応力、異文化理解、コミュニケーション能力、そして何よりも「主体的に行動し、未知の世界に飛び込む力」について語りました。例えば、先述のバスのトラブルの話を、困難な状況でも冷静に状況を分析し、複数の選択肢の中から最善策を選び出す能力の証として話したり、多様なバックグラウンドを持つ人々と交流した経験を、異なる意見を尊重し、建設的な関係を築く力として説明したりしました。

多くの学生が似たようなガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を話す中で、私の旅の経験は非常にユニークであり、面接官に強い印象を与えたようでした。単に「海外に行った」という事実だけでなく、その経験を通じて自分がどのように考え、行動し、成長したのかを具体的に語ることで、私の人間性やポテンシャルを効果的にアピールすることができました。

旅がもたらした「キャリア観」の大きな変化

バックパッカー旅が就職活動に役立ったのは、面接で話せるネタが増えた、ということだけではありません。もっと根本的なところで、私の「キャリア観」そのものに大きな変化をもたらしました。

旅先で出会った人々の中には、私たち日本人から見ると驚くほど多様な働き方、生き方をしている人がいました。特定の場所に縛られず、世界中を移動しながらリモートで仕事をするデジタルノマド、ゲストハウスの運営を手伝いながらその土地に長期滞在する人、ボランティア活動に専念する人、小さなお店を開いて暮らす人など、その形態は様々です。

彼らとの交流を通じて、私は「働くこと」や「豊かさ」の定義は一つではない、ということを肌で感じました。これまでは「良い大学を出て、良い会社に入り、安定したキャリアを築くこと」が唯一の正解のように感じていた節がありましたが、旅はそうした固定観念を打ち破ってくれたのです。

自分にとって本当に大切なものは何か、どのような働き方が自分に合っているのか、どのような生き方をしたいのか。旅の道中で自分自身と深く向き合う時間が増えたことで、これらの問いに対する答えが少しずつ見え始めました。それは、就職活動で企業を選ぶ上でも非常に重要な指針となりました。「安定」や「ネームバリュー」だけでなく、その企業の文化や、そこで働くことで自分がどのように成長できるか、どのような価値観を共有できるか、といった視点を重視するようになったのです。

結果として、私は当初想像していたのとは少し違う、自分自身の価値観に合った企業を選ぶことができました。旅がなければ、おそらく周りに流されるまま、自分が本当に望む道を見失っていたかもしれません。

バックパッカー旅は、キャリアへの遠回りではない

大学卒業後の進路に悩み、就職活動を前にバックパッカー旅を検討しているあなたへ。不安を感じる気持ち、よく分かります。もしかしたら、周囲から「就活に不利になるのでは?」といった声を聞くこともあるかもしれません。

しかし、私の実体験から言えるのは、バックパッカー旅は決してキャリアへの遠回りではない、ということです。むしろ、自分自身という最も大切な「資本」を理解し、社会に出る上で必要不可欠な生きたスキルを身につけ、そして何よりも自分にとって本当に大切な「キャリア観」を見つけるための、最高の投資になり得る、ということです。

もちろん、旅に出るだけですべてが解決するわけではありません。旅の中で何を経験し、そこから何を学び取るかは、あなた自身にかかっています。しかし、自らを未知の環境に置き、挑戦し、様々な人々と出会い、予期せぬ困難を乗り越える経験は、必ずやあなたの内面を豊かにし、その後の人生、そしてキャリアの選択肢を広げてくれるはずです。

もし、あなたが今、進路に迷い、何かを変えたいと感じているなら、バックパッカー旅はその力強い一歩になるかもしれません。そこで得られる経験は、あなたの履歴書を飾るだけでなく、あなた自身の人生という物語を、より深く、より豊かなものにしてくれることでしょう。旅の経験が、あなたの将来に思わぬ光を当ててくれることを、心から願っています。