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【私の実体験】バックパッカー旅、記録をつけて「気づく」ことで人生観が変わった話

Tags: バックパッカー, 旅の記録, 自己理解, 人生観, 体験談

はじめに:なぜ旅の記録は大切なのか

バックパッカーとして旅をする前、私は「旅の記録」というものにあまり意識を向けていませんでした。漠然と写真を撮り、SNSに投稿する程度で、それ以上のことをする必要があるのか疑問に思っていたのです。特に、初めての長期旅を前に、ルートや予算、安全対策など、考えるべき実践的な情報があまりにも多く、記録のことは二の次になっていました。

しかし、実際に旅に出てみると、毎日が新しい発見や感動の連続で、同時に予期せぬ出来事や、それまで感じたことのない感情に直面する日々でした。あまりにも多くの情報や感情が押し寄せてくる中で、「この旅で何を感じ、何を学び、どう自分が変化しているのか」を見失いそうになった瞬間があったのです。

その時、旅の記録が単なる思い出の保管庫ではないことに気づきました。それは、その時々の自分の感情や思考を捉え、後から見返すことで自分自身の変化に「気づく」ための、非常に強力なツールになり得る、ということです。今回は、私のバックパッカー旅での記録方法の試行錯誤と、それを通じて人生観がどのように変わっていったのかについて、お話ししたいと思います。

私の記録方法の遍歴と試行錯誤

旅を始めた当初、私の記録方法は本当に手探りでした。

写真とSNS投稿から始めた記録

まずは当たり前のように、目にした風景や出来事を写真に収め、時々SNSに簡単なコメントと共に投稿していました。これはこれで、後から「あの時こんな場所に行ったな」と思い出すきっかけにはなります。しかし、撮りっぱなしの大量の写真はすぐに整理がつかなくなり、SNSの短いコメントだけでは、その時自分が何を考え、何を感じていたのかが全く思い出せないことに気づきました。まるで、映画のシーンだけを切り取って見ているような感覚で、ストーリーや感情が抜け落ちてしまっていました。

手書きノートへの挑戦

これではいけないと思い、次に始めたのが手書きのノートです。その日あったこと、見たもの、食べたものなどを、寝る前に書き出すようにしました。最初は真面目に毎日書いていましたが、移動が続いたり、疲れていたりすると、ついサボってしまう日が増えました。後から読み返そうとしても、走り書きで内容がうまく思い出せなかったり、出来事の羅列になっているだけで、そこに自分の感情がほとんど書かれていないことに気づきました。

ボイスメモとブログでの記録

ノートが続かなかった反省から、もっと手軽な方法はないかと考えました。移動中や何か強烈な体験をした直後に、スマートフォンのボイスレコーダーで感じたことを吹き込むようにしてみました。これはその瞬間の生の声や感情が残るので、リアリティがあって良かったです。また、まとまった時間が取れた時に、ブログとして文章化する試みも始めました。ブログは構成を考える必要があり、少し時間をかけて内省するきっかけにはなりましたが、日々の細かな感情の動きを捉えるには、少しタイムラグがありました。

「気づき」をもたらした記録方法:感情と思考の記録

これらの試行錯誤を通じて、私が最も効果的だと感じ、そして最も「気づき」をもたらしてくれた記録方法は、「出来事だけでなく、その時自分が何を感じ、何を考えたのかを具体的に書き出すこと」でした。

具体的には、シンプルなノートやスマートフォンのメモアプリを使って、毎日決まった時間に数分でも良いので、以下の点を書き出す習慣をつけました。

最初は少し気恥ずかしいような、面倒なような感覚もありましたが、続けていくうちに、これは誰かに見せるものではなく、純粋に自分自身のための記録なのだと思えるようになりました。特に、ネガティブな感情も含めて正直に書き出すことが重要でした。

記録から見えた内面の変化:自分自身の変化に気づく

この「感情と思考の記録」を始めて数週間、そして数ヶ月と続けていくうちに、驚くほど多くの「気づき」がありました。

例えば、旅の初期の頃は、新しい環境への不安や、言葉が通じないことへの焦り、一人でいることの寂しさといったネガティブな感情が多く書き出されていました。しかし、旅が進むにつれて、見知らぬ土地での人々の親切に対する感謝、小さな発見をした時の喜び、困難を乗り越えられた時の達成感といったポジティブな感情が増えていくことに気づいたのです。

また、特定の出来事に対する自分の反応が、旅を通じて変化していることにも気づきました。例えば、最初の頃は些細なトラブルに動揺していましたが、旅に慣れるにつれて、「まあ、こんなこともあるか」と冷静に受け止められるようになっている自分を発見しました。これは、過去の記録を見返さなければ、漠然と「少しは慣れてきたな」と感じる程度で、これほど明確に自分の内面の変化を認識することはできなかったでしょう。

さらに、繰り返し出てくる自分の感情や、特定の状況で抱きやすい思考パターンに気づくことができました。例えば、私はどうも「完璧に計画通りに進まないといけない」というプレッシャーを自分にかけてしまいがちで、それが原因でストレスを感じていることに気づきました。記録を通じてそれに気づいたことで、「旅では計画通りにいかないことこそが面白い」という考え方に意識的にシフトできるようになり、旅がより楽しめるようになりました。

これらの「気づき」は、単に旅の思い出を彩るだけでなく、自分自身のことを深く理解する貴重な機会となりました。

記録が人生観にどう影響したか

旅の記録を通じて自分自身の内面の変化に気づけたことは、私の人生観にも大きな影響を与えました。

まず、「自分は思っているよりも変化に強く、適応力がある」という自信がつきました。記録には、初めての一人旅に不安を感じていた自分が、困難を乗り越え、未知の状況を楽しめるようになっている過程が描かれていました。これは、帰国後に新しい環境に飛び込む際にも、大きな心の支えとなりました。

次に、「感情や思考は常に変化するものであり、それは悪いことではない」ということを受け入れられるようになりました。旅の記録には、喜びだけでなく、落ち込みや迷いも正直に綴られています。それらを後から見返した時、「ああ、あの時はそう感じていたけれど、今は違うな」と思えることが多くありました。これは、ネガティブな感情にとらわれすぎず、自分自身の感情の動きを客観的に見つめる練習になったと思います。

そして何より、「自分自身に正直に向き合うことの大切さ」を学びました。記録をつけるという行為は、良くも悪くも自分自身の内面と向き合う時間です。その過程で、自分が本当に価値を置いているもの、自分が何に幸せを感じるのか、逆に何にストレスを感じるのかといった、自分自身の「核」のようなものが見えてきました。これは、帰国後の進路選択や、日々の人間関係において、自分にとって本当に大切なものを選び取る際の羅針盤となっています。

これから旅に出るあなたへ:記録を始めるアドバイス

もしあなたがこれから初めてバックパッカー旅に出るのであれば、ぜひ「記録をつける」ことを試してみてください。完璧な文章や美しい写真を目指す必要はありません。

この記録は、旅の素晴らしい思い出になるだけでなく、旅を通じて「自分自身」という最も大切なテーマと向き合うための、強力なサポートツールとなるでしょう。

まとめ:旅の記録は「自分を見つける」旅の一部

バックパッカー旅は、異文化に触れ、絶景を目の当たりにし、様々な人々と出会う刺激的な経験です。しかし、それと同時に、自分自身と深く向き合う内省的な旅でもあります。

私の経験から言えるのは、旅の記録は単に外部の出来事を書き留める行為ではなく、自分自身の内面で起きている変化を捉え、「自分とはどういう人間なのか」「何に価値を置いているのか」といった、普段の生活では見過ごしてしまいがちな「気づき」を与えてくれるツールであるということです。

旅で得た経験や学びは、帰国後の日常にこそ活かされるべきものです。旅の記録は、その旅で起こった内面の変化を鮮明に保ち、帰国後の人生を歩む上での指針となってくれるでしょう。

もしあなたが今、長期旅の準備をしながら不安を感じているのなら、記録をつけるという行為は、旅の途中で自分を見失わないため、そして旅を通じて得られる貴重な学びを確実に自分のものにするための、確かな一歩になるはずです。ぜひ、あなた自身の旅の記録を始めてみてください。