【私の実体験】バックパッカー旅で「当初の目的」が霞んだ時、どうすればいいか 〜 本当の自分を見つける旅の途中
バックパッカー旅の途中で目的が「変わる」のは普通のことです
バックパッカー旅に出る前、多くの方は「こうしたい」「これを見たい」「こんな経験をしたい」という具体的な目的や漠然とした夢を抱いているかと思います。私もそうでした。旅のルートを考え、行きたい場所をリストアップし、そこで何をするか、計画を立てて出発しました。
しかし、実際に旅を続けていると、当初抱いていた目的や計画が、徐々に意味をなさなくなったり、あるいはもっと別の何かに強く惹きつけられたりすることがあります。これは、決して珍しいことではありません。むしろ、バックパッカー旅では多くの人が経験することではないでしょうか。
この記事では、私自身の経験から、バックパッカー旅の途中で当初の目的が霞んだ時にどう感じ、どう向き合い、そしてそこから何を学んだのかをお伝えしたいと思います。もしあなたが今、旅の計画段階で「目的が曖昧になったらどうしよう」と不安を感じているなら、あるいは旅の途中で目的を見失いそうになっているなら、この記事が少しでもあなたの旅を続けるヒントになれば幸いです。
なぜ、旅の「当初の目的」は霞んでいくのか
旅の途中で当初の目的が霞んでいくのには、いくつかの理由が考えられます。私の経験から言えるのは、主に以下の3つです。
新しい情報と刺激の流入
旅に出ると、事前に調べていた情報だけでは知り得なかった現地のリアルな情報を日々受け取ることになります。人との出会い、偶然通りかかった魅力的な場所、思ってもみなかった現地のイベントなど、五感で感じるすべてのことが新しい刺激です。
私の場合は、当初は「ひたすら有名な遺跡を巡る」という目的で旅を始めました。しかし、道中で出会った旅人から「あの国の〇〇という村では、日本では考えられないような伝統的な生活が残っていて、それが本当に素晴らしい」という話を聞いたり、偶然参加したローカルなお祭りの熱気に触れたりするうちに、「遺跡を見る」ことへの優先順位が低くなっていきました。それまで興味がなかった「人々の暮らし」や「文化に触れる」ことに強く惹かれるようになったのです。
自分自身の変化
旅を続ける中で、良くも悪くも自分自身が変化していきます。体力や精神力がついてきたり、トラブルへの対処能力が身についたり、逆に疲労が蓄積したり。また、様々な価値観を持つ人々と出会うことで、自分の考え方や価値観が大きく揺さぶられることもあります。
旅の序盤は、完璧な計画を立ててそれを実行することに価値を見出していました。しかし、計画通りにいかないことの方が圧倒的に多い現実を経験するうちに、「計画通りに進めること」よりも「予期せぬ出来事を楽しむこと」や「流れに身を任せること」に面白さを見出すようになりました。その結果、「〇〇を達成する」という具体的な目的よりも、「この旅で何を感じられるか」という感覚的なものに意識が向かうようになったのです。
目的が達成された、あるいは意味をなさなくなった
旅の途中で当初の目的の一部が達成されたり、あるいは当初想定していた目的が、実際に経験してみるとそれほど重要ではなかったことに気づいたりすることもあります。
例えば、「特定のスキルを身につける」という目的で旅を始めたけれど、その機会がなかなか得られなかったり、あるいは思っていたものと違ったりするケース。あるいは、「都会の喧騒から離れて静かな場所で過ごす」ことを目指していたけれど、予想以上に孤独を感じてしまい、人との交流を求めるようになるケースなどです。
私の「遺跡巡り」の目的も、いくつかの遺跡を訪れるうちに「思っていたのと少し違うかもしれない」と感じ始めた時期がありました。写真で見て想像していたものと、実際に自分の目で見るもの、そこで感じる雰囲気や歴史の重みは、想像以上に異なりました。そして、遺跡を一つ見るごとに、単に「見た」という事実よりも、そこで出会った地元の人との会話や、旅仲間と共有した感動の方が、より深く心に残ることに気づきました。
当初の目的が霞んだ時、私が感じたこと
旅の途中で当初の目的が霞み始めた時、私は正直なところ、少し戸惑い、そして漠然とした不安を感じました。
「最初に立てた計画と違う方向に進んでいいのだろうか?」 「目的を見失って、この旅は何のために続けているのだろうか?」 「周りの旅人はみんな明確な目的を持っているのに、自分だけフラフラしているように見えないか?」
特に、完璧な計画を立てて旅をすることに価値を見出していた私にとって、「目的が曖昧になる」ということは、自分が間違った方向に進んでいるのではないか、この旅は失敗なのではないか、という焦燥感につながりました。情報過多の中で、どの情報を信じ、どの方向へ進むべきか混乱していた時期でもありました。
しかし、そこで立ち止まり、自分が何に惹かれているのか、何を楽しいと感じているのか、静かに自分自身に問いかけてみました。
当初の目的が霞んだ時、どう向き合い、どう行動したか
この戸惑いや不安に対して、私が具体的に行ったことは以下の3つです。
1.一度立ち止まり、正直な自分の心と向き合う
「計画通りに進まなければ」という固定観念から一度離れ、自分が今、何に最も興味を持っているのか、何をしたいと感じているのかを正直に自問自答しました。ノートに書き出したり、信頼できる旅仲間や家族に話を聞いてもらったりすることも有効でした。
私の場合は、前述のように「人々の暮らし」や「文化」への関心が強くなっていることに気づきました。「遺跡巡り」も素晴らしい経験でしたが、それ以上に、市場で地元の人と片言の言葉でやり取りをすることや、ゲストハウスで他の旅人と深夜まで語り合うことに、より強い喜びを感じている自分がいました。
2.新しい関心や好奇心を「新しい目的」として受け入れる
当初の目的を手放すことは、敗北ではありません。それは、旅を通じて得られた新しい視野や価値観を反映した、自然な変化です。私は、「遺跡巡り」から「現地の人々との交流や文化体験」へ、旅の重点をシフトさせることを決めました。これが、私の旅における新しい目的となりました。
もちろん、すぐに明確な「新しい目的」が見つからなくても大丈夫です。漠然とした「もう少しこの場所で過ごしたい」「あの人にもう一度会って話を聞きたい」といった直感的な感覚を大切にすることも、自分自身の本当の興味の方向を示してくれることがあります。
3.計画を柔軟に見直し、軌道修正する
新しい目的を受け入れたら、それに合わせて具体的な計画を見直しました。行こうと思っていた場所を変更したり、移動手段や宿泊先を変えたり。時には、少し立ち止まって一箇所に長く滞在し、より深くその土地の人々や文化と関わる時間を設けることも有効でした。
計画を見直すことは、決して「計画失敗」ではありません。旅の進行に合わせて、より自分にとって意味のある、より充実した時間を過ごすための「軌道修正」です。この柔軟な対応力は、旅を通じて身につく貴重なスキルの一つです。
目的の変化が教えてくれたこと:本当の自分を見つける旅の続き
当初の目的が霞み、新しい目的に向かって旅を続けた経験は、私の人生観に大きな変化をもたらしました。
1.変化を恐れず、受け入れる勇気
人生は常に変化し続けます。計画通りにいかないこと、予期せぬ出来事が起こることの方が圧倒的に多いかもしれません。旅の途中で目的が変わる経験は、そうした変化をネガティブに捉えるのではなく、「新しい可能性」として前向きに受け入れることの大切さを教えてくれました。それは、帰国後の人生においても、新しいキャリアに挑戦したり、想定外の出来事にも柔軟に対応したりする上で、大きな自信となっています。
2.「目的」は過程であり、絶えず更新されるもの
旅の目的は、出発前に設定する固定されたものではなく、旅を続ける中で見え方が変わり、時には全く新しいものに生まれ変わる、動的なものであることを学びました。それは人生の目的についても言えるかもしれません。当初描いていた理想や目標が、経験を積むことでより現実的になったり、あるいは全く違う方向に興味が向かったりすることは、成長の証です。
3.「自分にとって本当に大切なこと」が明確になる
当初の目的を手放し、新しい関心に従って旅を進める過程で、「自分が何に喜びを感じ、何に価値を置くのか」がよりクリアになりました。私の場合は、「有名なものを見る」ことよりも「人との繋がり」や「新しい文化に触れる」こと、そして「変化を受け入れ、柔軟に対応する自分」に価値を見出すようになりました。これは、帰国後の進路や生き方を考える上で、非常に重要な指針となっています。
まとめ:旅の目的は、自分自身を見つけるための道しるべ
バックパッカー旅の途中で当初の目的が霞むことは、決してネガティブなことではありません。それは、旅が順調に進んでいる、つまり、新しい経験を通じて自分自身が変化し、成長している証拠です。
もしあなたが今、旅の計画に迷ったり、旅の途中で目的を見失いそうになったりしているなら、一度立ち止まり、正直な自分の心に耳を傾けてみてください。そして、新しい関心や好奇心を「新しい目的」として受け入れ、柔軟に計画を見直す勇気を持ってみてください。
旅の目的は、遠いゴールを示すものではなく、むしろ「本当の自分」という目的地へ向かうための、その時々の道しるべのようなものです。その道しるべは、旅が進むにつれて新しいものに変わっていくかもしれません。その変化こそが、あなたをさらに深い自分探しの旅へと導いてくれるはずです。