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【私の実体験】旅の「普通」が教えてくれた、本当の価値観の見つけ方

Tags: バックパッカー, 価値観, 人生観, 自己発見, 海外一人旅

バックパッカー旅が始まる前の私と、旅への淡い期待

大学を卒業してすぐに長期のバックパッカー旅に出た私の胸には、大きな期待と同時に、漠然とした不安がありました。特に、これから社会に出ていく上で、自分が何を大切にしたいのか、どんな人生を送りたいのか、その軸となる「価値観」が曖昧だと感じていました。周りの友人が着々と進路を決める中で、焦りにも似た感情を抱えていた時期でした。

テレビやインターネットで見る海外の風景や、旅人の話に心を惹かれながらも、「旅が本当に自分の人生を変えるのだろうか」という半信半疑な気持ちもありました。それまで私が知っている「普通」は、日本社会、特に大学という閉じた世界での常識に大きく影響を受けていたからです。効率性、競争、物質的な豊かさ、安定した将来。それらが良いとされる価値観だと、無意識のうちに刷り込まれていたように思います。

長期バックパッカー旅を決意したのは、そんな自分の「普通」を一度リセットし、新しい価値観に出会いたいという切実な思いがあったからです。しかし、その変化が具体的にどのような形で訪れるのか、全く想像もついていませんでした。ただ、「どこか遠い場所へ行けば、何かが見つかるのではないか」という、淡く、しかし強い期待だけがありました。

私の「普通」が根底から揺さぶられた瞬間

旅が始まって数週間、アジアの喧騒の中で、私の持つ「普通」という感覚は早くも揺さぶられ始めました。特に印象的だったのは、ある小さな村での滞在です。そこには、裕福とは言えないまでも、人々が互いに助け合い、満たされた笑顔で暮らしている姿がありました。

彼らの時間の流れ方は、私が慣れ親しんだものとは全く違いました。約束の時間に遅れることは日常茶飯事で、計画通りに進まないことばかりです。最初はイライラしたり、「非効率だ」と感じたりもしました。しかし、そこで暮らす人々の間には、損得勘定だけではない、深い信頼関係や絆があることに気づきました。

都会の効率やスピード感を良いものとして育ってきた私にとって、彼らの生き方は衝撃的でした。物が少なくても、時間通りに進まなくても、彼らは確かに幸福そうに見えました。それは、私が追い求めていた「豊かさ」や「成功」とは全く異なる形だったのです。

異なる「普通」に触れて始まった内省

この体験を機に、私は深く内省するようになりました。私が「良い」と思っていた価値観は、本当に普遍的なものなのか。あるいは、私が無意識に捉われている「普通」は、単に生まれ育った環境に影響されたものではないか。

これまでの私は、「こうあるべきだ」という社会的な規範や、他者との比較の中で自分の価値や幸福を測っていたことに気づきました。しかし、旅先で出会った多様な「普通」は、幸福や価値観の形は一つではなく、自分の内側にある本当の望みや心地よさに耳を傾けることこそが重要だと教えてくれました。

旅が教えてくれた「本当の価値観」とは

旅を続ける中で、私は様々な国、地域で異なる「普通」に触れ続けました。ストイックな修行僧の姿、困っている旅人に無償で優しさを差し伸べる人々、自然と共に生きる少数民族、自分の「好き」を追求して自由に生きる旅人。

これらの経験を通じて、私の心の中にあった硬いブロックが少しずつ解けていくのを感じました。私が本当に大切にしたいのは、競争に勝つことでも、誰かに認められることでもないのかもしれない。それよりも、自分の好奇心に従って学ぶこと、多様な価値観を理解しようと努めること、そして何より、他者に対して開かれた心で接することではないか。

旅は、私に「比較しない」ことの重要性も教えてくれました。他人と比べるのではなく、過去の自分、そしてこれからどうありたいかという未来の自分と向き合うこと。そして、自分の内側から湧き上がる「好き」や「心地よさ」に正直に生きること。それが、私にとっての「本当の価値観」を見つける手がかりとなりました。

帰国後の人生の変化:見つけた価値観をどう活かすか

長期のバックパッカー旅を終えて日本に帰国した時、私の目に映る景色は、出発前と全く同じはずなのに、以前とは違って見えました。満員電車、慌ただしい人々、溢れるモノ。これらは以前なら「当たり前の日常」でしたが、旅を経て新しい価値観を得た私には、それが世界の「普通」のごく一部に過ぎないことが理解できていました。

旅で見つけた「本当の価値観」は、卒業後の進路選択にも大きな影響を与えました。かつての私なら、安定や世間体を最優先していたかもしれません。しかし、旅で培ったのは、自分の内なる声に耳を傾け、多様性を恐れず受け入れる姿勢でした。

私は、旅で得た学びを活かせる仕事、そして、自分の成長を続けられる環境を選ぶことができました。それは、旅に出る前の私が想像していたような、輝かしい成功物語ではなかったかもしれませんが、私にとっては非常に納得のいく、そして心地よい選択でした。

これから旅に出るあなたへ

もしあなたが、大学卒業後の進路に悩んでいたり、自分の価値観が分からずに混乱していたりするなら、バックパッカー旅はきっと大きなヒントを与えてくれるでしょう。旅は、単なる観光や遊びではありません。それは、世界中の多様な「普通」に触れることで、自分自身の「普通」がいかに限定的であるかを知り、本当の価値観を見つけるための、最高の自己探求の旅でもあります。

不安もあるかもしれません。しかし、一歩踏み出して異文化の中に身を置くことで、あなたの凝り固まった「当たり前」はきっと揺らぎ始めます。そして、その揺らぎこそが、あなたが本当に大切にしたいもの、あなたらしい生き方を見つけるための、大切な第一歩になるはずです。あなたの旅が、素晴らしい自己発見の機会となることを願っています。